「関の扉」
最後の公演として上演される。
山あげ祭が終演することを扉が閉まることにかけたもの
あらすじ
[上の巻]雪の降る逢坂山の新関。そのほとりには先帝仁明天皇の御陵があり、先帝遺愛の桜が移植され、寵臣四位少将良峯宗貞(原作では後に僧正遍昭)がその菩提を弔っている。この桜は雪中に返り咲いているが、先帝の崩御を悲しむあまり薄墨色に咲いたのだった。しかしそれが小野小町の詠んだ歌の徳によって色を増したことから、この桜は小町桜とも墨染桜ともいわれている。 その小町が三井寺へ参詣する途中に関を通りかかり、関守関兵衛と侘住まいをしている宗貞に会う。小町は宗貞の恋人であった。そこで小町は、宗貞の弟安貞が謀叛人に追い詰められて殺されたことを知らせる。すると宗貞は、関主の関兵衛の素性が怪しいことを語り、このことを小野篁に知らせようと小町を都へ戻らせる。 [下の巻]関兵衛こそ実は謀叛人の首魁大伴黒主であったのだ。黒主は今宵、盃に映った星影を見て時節到来を悟り、樹齢三百年になる桜の古木を天下調伏祈願の護摩木にしようと小町桜に伐りかかる。するとそこへ撞木町の傾城墨染と名乗る美女が現れ、黒主に言い寄る。この女はかつて安貞と契りを結んだという小町桜の精で、人の姿となって夫を殺した黒主を滅ぼそうとするのであった。 二人は互いに本性を隠して見初め、道中、廓話など廓の風俗を踊るが、安貞の血潮で「二子乘舟」と書かれた形見の片袖を見て墨染が落涙すると黒主はそれを見咎め、自らの本性を明かす。すると墨染も自らの本性を顕し、対峙するのであった。
みどころ †
関兵衛の酔態から占星、墨染の出、クドキ、見顕しから立ち廻り。墨染の出を舞台裏から見ることができる。これは通常の劇場ではできない山あげならではのたのしみのひとつ。
成立 †
顔見世狂言「重重人重小町桜」の大詰 下の巻は上の巻に比して難曲といわれる。また関兵衛の酒宴の章句には今日では不適切な表現があるとして、一八九九(明治三十二)年に九世市川團十郎主演で再演の際に福地桜痴居士によって改訂が施されているため、今日の稽古本には修正された章句が少なくない。
作者 †
劇神仙宝田寿来作詞 二世岸澤式佐作曲 二世西川扇蔵振付
初演 †
一七八四(天明四)年 桐座(顔見世)
上演時間 †
約50分
山あげ祭の音源がありますので掲載します。